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結局、抗菌薬使用基準は?

四国徳島からです。
当院の基本方針
①抗菌薬の適正使用
②改善しない鼻腔・副鼻腔疾患には手術を提案。
③糖質制限の提案・普及。

感染症に関する記事に遭遇したので、「抗菌薬適正使用」の記述を探しながら読んでみました。

風邪と診断されたのに、実は肺炎だった…それでも「誤診」ではない理由
読売新聞(ヨミドクター) 3/6(月) 12:13配信
小児外科医 松永正訓
 大学病院に19年間勤務した中で、私は一度だけ誤診をした経験があります。その患者は5歳の女の子でした。お腹(なか)に異様に大きなしこりがあるために、私たちの病院を紹介されてやって来たのです。超音波検査・X線CT検査を行ってみると、腎臓に巨大な腫瘍があり、肺にも多数の転移が見られました。こういう病気は一つしかありません。それは未熟な腎組織から発生するウイルムス腫瘍です。私たちは、女の子に手術を行い、腫瘍の一部を摘出して検査に回しました。そして検査の結果が出る前に、ウイルムス腫瘍に最適な抗がん剤治療を開始しました。
 摘出した細胞のひとかけらを私が研究室で培養していると、その腫瘍細胞は神経細胞に変化していきました。ウイルムス腫瘍ではそういったことは絶対に起きません。この腫瘍は未熟な神経細胞から発生する神経芽腫(がしゅ)です。私は急いで抗がん剤の種類を変更しました。後で調べて見ると、腎臓から発生する神経芽腫は世界でも数例しかありませんでした。極めて稀(まれ)な病気に出会うと、診断を誤ることもあると知りました。
 さて、今日は子どもの肺炎について説明します。肺炎という病態は意外と正しく理解されていないため、時に開業医と保護者の間でトラブルになったりします。
耳鼻科の診断は風邪
 幼稚園の年長組の男の子が私のクリニックを受診しました。ママの話では、その年長君は10日前から鼻水があり、咳(せき)も少しありました。鼻水が目立つので耳鼻科を受診したところ「風邪ですね」と言われて薬を出されたそうです。しかし、その後発熱し、咳がどんどんひどくなるので、小児科でも診てもらった方がいいと考えてうちに来たと言います。
 私は、耳鼻科の先生が処方した薬の内容を知りたくてお薬手帳を見せてもらいました。
ペリアクチン(抗ヒスタミン剤:鼻水止め)
ムコダイン(痰切り)
ムコソルバン(痰切り)
アスベリン(咳止め)
ホクナリンテープ(気管支拡張剤)
メイアクト(抗生物質)
ビオフェルミンR(整腸剤)
カロナール(解熱剤)
 こうした薬が並んでいます。定番と言ってもいいでしょう。そして私は年長君の様子を詳しく聞きました。発熱が5日目に入っていて、痰が絡む咳が10日間に及んでいます。聴診器を年長君の胸に当てると、右肺からゴロゴロという雑音がします。呼吸がやや速くて、呼吸のたびに肋骨(ろっこつ)と肋骨の間が少しだけ凹(へこ)みます。
 もうこの段階で診断はついています。年長君は肺炎です。胸部のX線を撮影してみると、年長君の右の肺に白い影が広がっていました。これで診断は確定です。X線写真をお見せすると、ママは矢継ぎ早に質問してきました。
 「肺炎? 風邪じゃなかったんですか? 診断が間違っていたんですか?」
 「最初から小児科に行けばよかったんですか?」
 「肺炎だと入院ですよね?」
 「何で、肺炎になってしまったんですか? 薬を飲んでいたのに」
 「下の子に肺炎がうつっていないかしら?」
 少し興奮気味のママをなだめて、私は肺炎についてじっくりと話を始めました。
確かに、最初はただの風邪だが…
 年長君に対する「風邪」という診断は間違っていません。最初はただの風邪なんです。風邪とは、上気道(じょうきどう)(のどや鼻)にウイルスが感染した状態です。この段階では肺にはまったく炎症は起きていません。ですから、診断が間違っていたということはありません。最初から肺炎の子どもなどいないのです。
 風邪(急性上気道炎)は、連載の1回目で説明したように99%以上は自然治癒します。発熱は72時間くらい、咳は長くても10日くらいです。つまり逆から説明すると、発熱が72時間を超えたり、咳が10日を超えたりした場合は、「風邪がこじれている」可能性を考える必要があります。
 上気道に感染したウイルスの病原性が高いとき、あるいはお子さんの免疫力・抵抗力がダウンしている時、ウイルスは下気道に向かって進んでいきます。下気道の行き止まりは肺ですから、最終的に肺炎になります。つまり、耳鼻科の先生が診察した時は、風邪(上気道炎)だったのですが、私が診た時は肺炎になっていたということです。耳鼻科の先生の診断は間違っていません。誤診ではないのです。
何科に行っても風邪は99%以上治る
 医者というのは不思議な職業で、どういう病気が専門なのか一般の人にはとてもわかりにくいと思います。耳鼻科とか眼科は、それぞれ「耳・鼻・喉」や「眼」が専門です。つまり、そういった臓器の専門家ですね。ところが小児科というのは専門の臓器を持っておらず、小児をトータルで診ます。さらに病気だけでなく、発達・発育も診ます。
 風邪は自然に治りますから、極論を言えば何科に行ってもかまいません。耳鼻科の先生の中には「自分は、子どもの風邪を上手に治せる」と信じている人がいるかもしれませんが、それは誤解であって風邪は自然に治っているのです。
 処方する薬も、耳鼻科でも小児科でも極端な違いはありません。しかし最近、小児科の先生の中には、風邪に対してほとんど薬を出さないという人が増えてきています。風邪に風邪薬はほとんど効果がないという判断からです。私も、この年長君を初めに診たら、
ムコダイン(痰切り)
アスベリン(咳止め)少々
 くらいしか出さないと思います。抗生物質は絶対に出しません。その代わり、生活指導をすると思います。冬であれば、保温と加湿が重要です。栄養を十分にとって、水分補給をし、疲れを残さないようにして、早寝をすることです。そして十分に洟(はな)をかむ。こうした環境整備や生活指導の方が、風邪薬を飲むより大事なんです。そこを私は強調するでしょう。
薬を飲んでいても肺炎になる
 では、年長君は、間違った薬を飲んでいたから肺炎になってしまったのでしょうか? そうではありません。みなさんは、風邪薬を飲むと風邪の進行がストップする、あるいは治癒すると考えているかもしれません。しかし、実際には風邪の症状が緩和されるだけに過ぎません。風邪薬を飲んでも飲まなくても、風邪が治るまでの期間はほとんど変わりません。風邪から肺炎に進むことを止める薬があれば、こんないいことはないでしょう。あれば私も使います。しかし、残念ながらそういう薬は存在しません。
 私は年長君のママに、家では十分に安静を保てたか聞いてみました。すると、昨日の朝は熱が下がっていたために幼稚園に行かせたと言います。体温というのは、朝は下がっていて午後から上昇に転じるものなのです。それを知らないと、風邪のお子さんを幼稚園や保育所(園)に行かせてしまうことがあります。それでは風邪は悪化してしまいます。平熱になって、その状態を24時間キープできて初めて登園させるべきです。
 さて、X線検査で肺炎を確認したら次に行うのは、血液検査です。血液検査は肺炎を起こしている病原体の犯人を推定するために必要です。ウイルスが肺にまで広がった肺炎は「ウイルス性肺炎」です。
 ところが、そこに細菌感染が加わることがあります。私たちの鼻の奥には細菌がふだんからすみ着いています。そういった細菌が肺の中へ落下して繁殖すると、「ウイルス性肺炎」は「細菌性肺炎」になります。
 また、ウイルスや細菌とは全然関係なく、マイコプラズマという病原体で肺炎になることもあります。ちなみにマイコプラズマ感染症は、乾いた咳がしつこく続くのが特徴です。まとめますと、X線検査で肺炎の有無を確定して、(主に)血液検査で「ウイルス性肺炎」「細菌性肺炎」「マイコプラズマ肺炎」の区別をつける(推定する)のです。もちろん、肺炎の原因の病原体の違いによって治療方法も変わってきます。
 なお、風邪の段階で抗生物質を飲めば「細菌性肺炎」や「マイコプラズマ肺炎」を予防できるという考え方は、 完全に間違っています 。そんなことをしても体内の細菌をゼロにすることはできません。お子さんの抵抗力を上げることの方が大事なのです。薬を飲んでいるから後は治るだけ……そんなふうに安易に考えるのはよくありません。薬に頼って油断するくらいなら、医者に行かずに家で寝ていた方がまだましです。
肺炎はうつるか?
 これもよく聞かれることですが、肺炎は風邪のなれの果てですから、肺炎という病態がそのままきょうだいにうつるということはありません。もちろん風邪の原因としてのウイルスは感染する可能性はありますが、それはあくまでも風邪に過ぎません。
 入院が必要なくらいのひどい細菌性肺炎でも、その細菌は自分の体の中から肺へ広がったわけですから、そうした細菌が人にうつるということはありません。
 微妙なのは、マイコプラズマです。マイコプラズマは自然界に存在していて、それを吸い込んでしまうために発症します。だから咳などを通して人から人へうつることもあります。きょうだい間の感染とか、寄宿舎などの共同寝室での集団感染も医学書には記載されています。しかしながら、マイコプラズマは潜伏期間が2~3週間のため、感染しても発症せずに治ってしまうことが多いのです。「うつらない」とは言えませんが、冬のインフルエンザのように大流行することは絶対にありません。
 とにかく、子どもの肺炎に関しては、誤解がとても多いと言えます。最初の診断が風邪だったからと言って、感情的にならずに落ち着いて主治医の話を聞いてくださいね。子どもの病気は変化が速いので、前日は普通の呼吸をしていたのに、翌日には呼吸困難になっていることも決して珍しいことではありません。
 「風邪は万病のもと」と昔の人は言いました。その通りですね。始まりはいつも風邪です。風邪が風邪で終わるように、自宅で十分ケアしてください。

松永 正訓(まつなが・ただし)
1961年、東京都生まれ。1987年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より「松永クリニック小児科・小児外科」(http://www.mtng-clinic.jp)院長。
『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』で2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)など。
ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

非常に優秀な小児外科医ドクターですね。
もう一歩切り込んで欲しい感があります。
風邪はほとんどが「ウイルス感染症」です。
その中に「細菌感染症」がわずかに発生しております。
「肺炎」も「ウイルス性肺炎」と「細菌性肺炎」を区別して対処しなければなりません。
その肝心な対処がウヤムヤになっておりました。
「血液検査」では分かりません。
耳鼻咽喉科医批判とも思われる記述にはがっかりです。
呼吸器感染症に携わっている多くの医師も同じ傾向が続いているように思えます。
20年前の私もそんなふうでした。

「抗菌薬適正使用」をきちんと説明して欲しかったです。
膨大な数の読者の目に留まりますから。

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本日も抗菌薬診療はゼロでした。
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「スーパー糖質制限」実行中。
8時半血糖値:121mg/dl。

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by hanahanak2 | 2017-03-07 22:02 | Comments(0)